服選びが変わる主要エシカル素材ガイド
エシカルファッションにおける素材選びの重要性
私たちが日々身につける衣料品は、様々な素材から作られています。その素材がどのように生産され、加工されているかを知ることは、エシカルファッションを実践する上で非常に重要な第一歩となります。素材選びは、環境負荷の低減、生産に携わる人々の労働環境への配慮、そして資源の有効活用など、多岐にわたるエシカルな課題に直結しています。
例えば、一般的な素材の生産過程では、大量の水や化学薬品が使用され、環境汚染の原因となることがあります。また、素材によっては、生産地の労働者に過酷な労働条件や不当な賃金を強いている可能性も指摘されています。
エシカルな素材を選択することは、こうした問題に意識を向け、より良い選択肢を選ぶことにつながります。ここでは、エシカルファッションにおいてよく見られる主要な素材と、それぞれの特徴についてご紹介します。
主要なエシカル素材とその特徴
エシカルな素材には様々な種類がありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
オーガニックコットン
一般的なコットン栽培では、大量の農薬や化学肥料が使用されます。これらは土壌や水源を汚染し、生産に携わる人々の健康にも悪影響を与える可能性があります。
一方、オーガニックコットンは、オーガニック認証を受けた農地で、3年以上農薬や化学肥料を一切使用せずに栽培されたコットンです。土壌の健康を維持し、生物多様性を守りながら育てられます。また、遺伝子組み換え種子は使用されません。
- 特徴: 肌触りが柔らかく、吸湿性に優れている点は一般的なコットンと同様ですが、環境や人体への負荷が少ない方法で生産されています。
- 見分け方: GOTS(Global Organic Textile Standard)などの国際的な認証ラベルが付いている製品を選ぶことが目安になります。
リサイクル素材
廃棄されたペットボトルや漁網、衣料品などを回収し、再資源化して作られる素材です。代表的なものに、リサイクルポリエステルやリサイクルナイロンがあります。
新しい石油由来の素材を生産するのに比べて、エネルギー消費や温室効果ガス排出量を削減できる点が大きなメリットです。また、廃棄物を減らすことにも貢献します。
- 特徴: 元の素材の特性(耐久性、速乾性など)を活かしつつ、環境負荷を低減しています。
- 見分け方: GRS(Global Recycled Standard)などの認証ラベルが、リサイクル含有率などの信頼性の高い情報を提供しています。
テンセル™リヨセル繊維/モダール繊維
オーストリアのレンチング社が生産する再生繊維です。ユーカリなどの木材パルプを原料とし、クローズド・ループと呼ばれる環境負荷の少ない製法で作られています。使用される溶剤のほとんどが再利用されるため、排水量が少なく環境への影響を抑えられます。
- 特徴: シルクのような光沢とドレープ性、滑らかな肌触り、吸湿性・速乾性に優れており、快適な着心地を提供します。生分解性を持つため、最終的に自然に還ります。
ヘンプ(麻)
栽培に水や農薬がほとんど必要なく、成長が早いため、環境負荷が非常に少ない植物です。土壌を豊かにする効果もあります。
- 特徴: 強くて丈夫でありながら、通気性が良く、抗菌性も持つと言われています。使い込むほどに柔らかさが増します。
素材選びから始めるエシカルファッション
ご紹介した以外にも、竹やリネン(亜麻)、藻類由来の繊維など、様々なエシカル素材が存在します。それぞれの素材が持つ環境的・社会的な側面を知ることで、服を選ぶ際の視点が大きく変わる可能性があります。
全てのアイテムを一度にエシカルな素材に変えることは難しいかもしれません。しかし、一つの素材に注目してみたり、製品のタグに記載された情報を少し意識してみたりすることから始めてみるのはいかがでしょうか。
エシカルな素材を選ぶことは、地球環境や生産者の人々への配慮を示す行動であり、同時に、着るものを通して自分自身の価値観を表現することにもつながります。素材について学ぶことが、エシカルファッションをより身近に感じ、日々の選択に自信を持つための一助となれば幸いです。