エシカルブランド図鑑

フェアトレードとは?エシカルファッションで知る服作りを支える人々

Tags: フェアトレード, エシカルファッション, 労働環境, サプライチェーン, 認証ラベル

エシカルファッションという言葉を聞くとき、多くの方はまず環境への配慮や動物福祉を思い浮かべるかもしれません。確かに、オーガニック素材の使用や動物性素材の不使用、マイクロプラスチック問題への対応など、環境や動物に関する側面は非常に重要です。しかし、エシカルファッションにはもう一つ、欠かせない視点があります。それは、「人」への配慮、つまり服を作る世界中の人々が公正な条件下で働けているかという点です。

この「人」に焦点を当てる上で特に重要なのが、フェアトレードという考え方です。私たちは普段、一枚の服がどのような過程を経て自分の手元に届くのかを意識する機会は少ないかもしれません。しかし、その服はデザイナー、素材を作る農家、糸を紡ぐ人、生地を織る人、縫製する人、染色する人、そして物流に関わる人々など、数多くの手を経て作られています。フェアトレードは、この複雑なサプライチェーンに関わるすべての人々、特に発展途上国と呼ばれる地域で生産に関わる人々が、人間としての尊厳が守られ、公正な扱いを受けられるようにするための取り組みです。

フェアトレードとは何か?

フェアトレードは、開発途上国の弱い立場にある生産者や労働者が、適正な価格で取引を行い、持続可能な生活と自立を目指せるように支援する貿易の仕組みです。単に商品を買い取るだけでなく、長期的な取引関係を築き、生産者が将来を見据えた計画を立てられるようにサポートすることも含まれます。

フェアトレードにおける主な原則には、以下のような点が含まれます。

ファッション業界とフェアトレードの関連性

ファッション業界は、グローバルなサプライチェーンを持つ代表的な産業の一つです。素材の生産から縫製、仕上げに至るまで、多くの工程がアジアやアフリカ、中南米といった発展途上国の工場や農場で行われています。残念ながら、こうした地域では、低賃金、長時間労働、危険な作業環境、児童労働、ジェンダーに基づく差別といった問題が根深く存在することが指摘されています。

特に、ファストファッションに代表されるような、短いサイクルで大量生産・大量消費を促すビジネスモデルは、コスト削減のために生産現場に過度のプレッシャーをかける傾向があり、劣悪な労働環境を生み出す一因となってきました。

フェアトレードの考え方は、こうしたファッション業界が抱える「人権」に関わる問題への重要な解決策となります。フェアトレード認証を取得している、あるいはフェアトレードの精神を実践しているブランドは、サプライチェーンに関わる人々、特に縫製工場や素材を生産する農家の人々が、公正な賃金を受け取り、安全な環境で尊厳を持って働けるように努めています。これは、単に倫理的な問題であるだけでなく、持続可能なファッション産業を築く上で不可欠な要素です。

エシカルファッションにおけるフェアトレードの実践例と見極めるポイント

エシカルファッションブランドの中には、積極的にフェアトレードに取り組んでいるところが多くあります。その実践方法は様々です。

読者の皆様がエシカルファッションを選ぶ際に、フェアトレードの観点から注目すべきポイントは以下の通りです。

全てのブランドが完璧な情報を開示しているわけではありませんが、積極的に情報を公開し、改善に向けて努力しているブランドを支持することは、ファッション業界全体の倫理的な変革を後押しすることにつながります。

まとめ:服の向こう側にある物語に想いを馳せる

フェアトレードは、エシカルファッションを考える上で避けて通れない重要なテーマです。私たちが何気なく身につけている一枚の服の向こう側には、それを作る人々の暮らしと物語があります。フェアトレードの視点を持って服を選ぶことは、単にトレンドやデザインで選ぶのではなく、その服が持つ背景にある価値観や、関わる全ての人々への配慮に共感し、賛同するということです。

フェアトレードに取り組むブランドを選ぶことは、世界のどこかで働く人々の公正な労働環境と尊厳を守ることに直接的に貢献できます。そしてそれは、持続可能で、より人間的なファッション産業の実現に向けた、私たち一人ひとりができる大切な一歩と言えるでしょう。完璧を目指す必要はありませんが、この視点を意識することで、いつもの服選びが、社会や世界との繋がりを感じる、より豊かな体験へと変わるかもしれません。