長く着るためのエシカルな服のケア:素材別お手入れ&保管のポイント
エシカルファッションを長く愛用するために
エシカルファッションを選ぶことは、環境や社会に配慮した消費行動の一つです。しかし、購入するだけでなく、その服をいかに長く大切に着続けるかも、エシカルな視点においては非常に重要です。服の寿命を延ばすことは、廃棄物を減らし、新たな資源の消費を抑えることにつながります。
服を長く愛用するためには、日頃のお手入れや適切な保管が欠かせません。特に、天然素材やリサイクル素材など、エシカルファッションに多く用いられる素材は、それぞれ特性が異なります。素材に適したケアをすることで、風合いを保ち、衣類を傷めることなくより長く着用することが可能になります。
この記事では、主要なエシカル素材をいくつか取り上げ、それぞれのお手入れ方法と保管のポイントをご紹介します。素材の特性を知り、日々のケアに取り入れることで、お気に入りのエシカルな服をさらに長く、心地よく着続けられるようになります。
素材別お手入れと保管のポイント
エシカルファッションに使われることが多い代表的な素材について、お手入れと保管の注意点を見ていきましょう。必ず衣類についている洗濯表示を確認することが基本ですが、一般的な性質を理解しておくと役立ちます。
オーガニックコットン
- 特徴: 肌触りが良く吸湿性に優れていますが、縮みやすい性質があります。化学薬品を使わずに栽培されており、環境負荷が低い素材です。
- お手入れ:
- 洗濯機で洗う際は、裏返してネットに入れるのがおすすめです。
- 洗剤は、蛍光剤や漂白剤の入っていない中性洗剤を使用すると、色落ちや生地の傷みを抑えられます。
- 乾燥機にかけると縮みやすいので、自然乾燥が適しています。形を整えて日陰干しをすると良いでしょう。
- 保管:
- 湿気を避け、風通しの良い場所に保管します。
- 畳んで収納する場合、重いものを上に乗せるとシワになりやすいので注意が必要です。ハンガーにかける場合は、ニットなど伸びやすいものは避けた方が無難です。
リネン(麻)
- 特徴: 通気性が良く丈夫ですが、シワになりやすい素材です。使うほどに柔らかさが増し、風合いが出ます。
- お手入れ:
- 洗濯機で洗えますが、洗いすぎは生地を傷める可能性があります。手洗いまたは洗濯機の弱水流コースを選ぶと長持ちします。
- 洗剤は中性洗剤がおすすめです。
- 脱水は短時間で行い、濡れた状態で軽く引っ張りながら形を整えて干すとシワが軽減されます。天日干しでも問題ありません。
- アイロンは、半乾きの状態か、霧吹きで湿らせてからかけるとシワが伸びやすくなります。高温でかける際は当て布をすることをおすすめします。
- 保管:
- 湿気を嫌うため、乾燥した場所に保管します。
- シワになりやすいため、ハンガーにかけて保管するのが理想的です。
テンセル™リヨセル、モダールなど再生繊維
- 特徴: ユーカリなどの木材パルプを原料とし、比較的環境負荷の低い製造工程で作られることが多い繊維です。ドレープ性があり、滑らかな肌触りが特徴です。デリケートな性質を持っています。
- お手入れ:
- 摩擦に弱いため、手洗いまたは洗濯機の非常に弱い水流コース(おしゃれ着用コースなど)を選び、ネットに入れて洗います。
- 中性洗剤を使用します。
- 乾燥機は避け、形を整えて日陰干しします。絞ったり擦ったりせず、優しく扱ってください。
- 保管:
- 湿気を避け、風通しの良い場所に保管します。
- シワになりやすいものもあるため、ハンガーにかけて保管するのが適しています。
リサイクルポリエステル、リサイクルナイロンなど再生化学繊維
- 特徴: ペットボトルや漁網などをリサイクルして作られる素材です。強度があり、比較的お手入れがしやすい性質があります。
- お手入れ:
- 洗濯機で洗えるものがほとんどですが、耐久撥水加工などが施されている場合は、その加工に合わせた洗剤や洗い方を選ぶ必要があります。洗濯表示を確認してください。
- 柔軟剤を使用すると、吸湿性や速乾性が損なわれたり、マイクロファイバーの抜け落ちを促進したりする可能性があるため、使用を控えるか少量に留めるのが良いとされています。
- 乾燥機は素材を傷めたり縮ませたりする可能性があるため、自然乾燥がおすすめです。
- 洗濯の際は、マイクロプラスチックの流出を抑える洗濯ネット(マイクロファイバーフィルター付きなど)の使用を検討するのも良い方法です。
- 保管:
- 特に気を付ける点はありませんが、直射日光による色褪せには注意が必要です。
ウール
- 特徴: 保温性、吸湿性に優れ、天然の抗菌・防臭作用がありますが、摩擦や熱にデリケートです。適切にケアすれば非常に長持ちします。
- お手入れ:
- 頻繁な洗濯は不要で、着用後は風通しの良い場所で陰干しするだけで十分なことが多いです。
- 汚れが付いた場合は、部分的なつまみ洗いや、ウール用洗剤を使った手洗い、またはクリーニングが推奨されます。洗濯機の場合は、必ずウールコースやドライコースを選び、専用洗剤を使用します。
- 乾燥機は厳禁です。形を整えて平干しするか、厚みのあるハンガーにかけて風通しの良い場所で陰干しします。
- 保管:
- 湿気はカビや虫食いの原因となるため、乾燥した場所に保管します。
- 防虫剤を使用することをおすすめします。防虫剤が直接衣類に触れないように注意してください。
- 畳んで保管する場合、重みで型崩れしないよう一番上に置くか、厚みのあるハンガーにかけて保管します。
シルク
- 特徴: 滑らかで光沢があり、吸湿性・放湿性・保温性に優れていますが、水や汗染み、摩擦、紫外線に非常に弱いです。
- お手入れ:
- ドライクリーニングが推奨されることが多いですが、自宅で手洗いする場合は、30℃以下のぬるま湯にシルク用または中性洗剤を溶かし、優しく押し洗いをします。
- 擦ったり絞ったりは厳禁です。複数回水を取り替えて丁寧にすすぎます。
- 脱水はタオルで挟んで水分を吸い取るか、洗濯機でごく短時間(30秒以内など)行います。
- 形を整え、直射日光を避けて陰干しします。
- アイロンは、半乾きの状態で低温・裏側から当てるか、当て布をしてかけます。
- 保管:
- 湿気や光(特に紫外線)は変色や劣化の原因となるため、乾燥した暗所に保管します。
- 虫食いの可能性もあるため、防虫剤を使用することをおすすめします。
- 畳むとシワになりやすいため、ハンガーにかけて保管するのが適しています。滑りやすいので、専用のハンガーを使用すると良いでしょう。
長く着るための共通のヒント
素材ごとのケアに加えて、エシカルな服を長く大切にするための一般的なヒントをいくつかご紹介します。
- 洗濯表示の確認を徹底する: 服についているタグの洗濯表示は、その服にとって最適なケア方法を示しています。必ず確認し、それに従うことが基本です。
- 洗剤選び: 環境負荷が少なく、衣類にも優しい天然成分由来の洗剤や、環境認証を取得している洗剤を選ぶこともエシカルな選択です。素材に合った洗剤を選ぶと、風合いを保つことができます。
- 汚れはすぐに落とす: 汚れが付いたら時間が経たないうちに処理する方が、落ちやすく生地への負担も少なくなります。
- 過度な洗濯を避ける: 洗濯は少なからず衣類を傷めます。一度着ただけで洗うのではなく、汚れがない場合は風を通して湿気を取り除くなど、洗濯の頻度を減らす工夫も大切です。
- 収納場所の工夫: 湿気がこもらず、風通しの良いクローゼットやタンスに保管することが理想です。詰め込みすぎず、衣類同士の間隔を適切に保つと、湿気やシワを防ぐことができます。
丁寧なケアがエシカルな消費につながる
エシカルファッションの服を選ぶことは、一つの良いステップです。そして、その服を素材に合わせた適切なお手入れと保管で長く大切にすることは、ファッションのライフサイクル全体をよりサステナブルにするための次の重要なステップとなります。
少し手間がかかるように感じるかもしれませんが、お気に入りの一着を丁寧にケアすることは、服への愛着を深め、流行に左右されずに長く着用することにつながります。それは結果として、無駄な消費を減らし、持続可能なファッションを実現する力となります。
完璧を目指す必要はありません。まずは、お持ちのエシカルな服の素材を確認し、一つからでも適切なケアを取り入れてみることから始めてみてはいかがでしょうか。日々の少しの心がけが、あなたのクローゼットと地球の未来にとって、ポジティブな変化をもたらすことでしょう。