エシカルファッション、何を基準に選ぶ?多様な価値観と選び方のヒント
エシカルファッションの多様な価値観とは
エシカルファッションへの関心が高まる中、「エシカル」という言葉が示す範囲の広さに戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。環境への配慮、生産に携わる人々の労働環境、動物福祉など、様々な側面から「エシカル」を捉えることができます。
この記事では、エシカルファッションを選ぶ際に考慮できる多様な視点を紹介し、ご自身の価値観やライフスタイルに合った基準を見つけるためのヒントを提供します。完璧を目指す必要はありません。まずは、ご自身が最も大切にしたいと感じる点から始めてみることが、エシカルな服選びを無理なく継続するための第一歩となります。
エシカルファッションを選ぶ主な基準と視点
エシカルファッションを選ぶ際に考えられる主な基準や価値観には、以下のようなものがあります。これらは互いに関連し合うこともありますが、ここでは理解を助けるためにいくつかの視点に分けて説明します。
1. 環境負荷の低減
ファッション産業は、製造から廃棄に至るまで、環境に大きな影響を与えています。水質汚染、大気汚染、大量の温室効果ガス排出、資源の大量消費などが課題となっています。
- 重視するポイント:
- 使用される素材の環境負荷(オーガニック、再生素材、低水消費素材など)
- 製造工程における環境対策(汚染物質の管理、節水、省エネルギーなど)
- 製品の耐久性や廃棄物削減への取り組み
- 輸送における環境負荷低減の努力
- 選び方のヒント:
- 素材表示を確認し、環境認証(例:GOTS認証オーガニックコットン、FSC認証木材パルプ由来繊維など)のある素材や、再生・リサイクル素材の使用率が高いブランドを選びます。
- ブランドのウェブサイトで、環境ポリシーや具体的な取り組み(使用エネルギーの種類、排水処理システムなど)が公開されているかを確認します。
- 修理サービスやリサイクルプログラムを提供しているブランドは、製品のライフサイクル全体を考えていると言えます。
2. 労働環境と人権
ファッション製品は、世界中の様々な場所で、多くの人々の手によって作られています。その生産過程では、低賃金、劣悪な労働条件、長時間労働、児童労働といった人権に関わる問題が発生することがあります。
- 重視するポイント:
- 生産に関わるすべての人々(農家、工場労働者など)の安全、健康、適正な賃金、人権が保障されているか。
- 児童労働や強制労働を排除しているか。
- 労働組合の権利が尊重されているか。
- 選び方のヒント:
- フェアトレード認証(例:フェアトレードコットン)が付いている製品は、生産者の労働環境や生活改善に配慮されています。
- ブランドがサプライチェーンの透明性を高め、製造工場の情報を公開しているかを確認します。透明性は、問題があればそれを是正しようとする姿勢の表れと言えます。
- SA8000のような労働環境に関する社会認証を取得しているブランドも信頼の一助となります。
3. 動物福祉
ウール、レザー、ダウン、シルクなどの動物由来素材を使用するファッション製品では、動物の飼育方法や素材の採取方法が倫理的な基準を満たしているかが問われます。
- 重視するポイント:
- 動物が苦痛を伴わない方法で飼育され、素材が採取されているか。
- ミュールシングのような残酷な行為を行っていないか。
- フォアグラ生産や生きている動物からの羽毛採取など、倫理的に問題のある方法で得られた素材を使用していないか。
- 選び方のヒント:
- ミュールシングフリーのウールや、RDS(Responsible Down Standard)認証のダウンなど、特定の動物福祉基準を満たした素材を使用しているかを確認します。
- ヴィーガン認証など、動物性素材を一切使用しない製品やブランドを選ぶことも一つの方法です。ただし、ヴィーガン素材の中にも環境負荷が高いものがあるため、他の基準と合わせて考慮することが推奨されます。
- ブランドの動物福祉ポリシーが公開されているかを確認します。
4. サステナブルな素材
持続可能性の高い素材を選ぶことは、環境負荷低減の重要な要素ですが、ここでは特に素材そのものに焦点を当てます。
- 重視するポイント:
- 再生可能で、枯渇のリスクが低い資源から作られているか。
- 栽培や生産に大量の水、エネルギー、化学物質を必要としないか。
- 生分解性があるか、またはリサイクルしやすい素材か。
- 選び方のヒント:
- オーガニックコットン、ヘンプ、リネンといった栽培時の環境負荷が比較的低い天然繊維や、FSC認証木材パルプを原料とするリヨセル(TENCEL™など)、モダールといった再生繊維に注目します。
- ペットボトルなどをリサイクルした再生ポリエステルや、漁網などをアップサイクルした再生ナイロンなども有効な選択肢です。
- 素材に関する認証ラベル(例:GOTS, Oeko-Tex, BCI, TENCEL™ など)は、その素材が一定の基準を満たしていることを示す手がかりとなります。
5. 製品の長寿命化と循環
製品を長く愛用し、最終的に適切にリサイクルまたはアップサイクルすることは、ファッションロス削減や資源循環に貢献します。
- 重視するポイント:
- 高品質で、長く着られるデザイン・縫製であるか。
- 修理やメンテナンスがしやすい製品か。
- ブランドが修理サービスやリサイクル、アップサイクルといった製品の循環に関する取り組みを行っているか。
- 選び方のヒント:
- 流行に左右されすぎない、タイムレスなデザインの製品を選びます。
- 縫製が丁寧で、丈夫な素材が使われているかを確認します。
- ブランドが提供する修理サービスや、不要になった服の回収・リサイクルプログラムを利用できるかも選択肢の一つです。
- 中古品やヴィンテージ品を選ぶことも、既存の服に新たな命を吹き込む素晴らしい方法です。
自分にとって大切な基準を見つけるために
このように、エシカルファッションを選ぶ基準は一つではありません。ご自身のライフスタイルや価値観、社会や環境問題への関心などを踏まえて、何を最も重視したいかを考えてみましょう。
- 関心のある社会・環境問題と結びつける: ご自身が特に懸念している環境問題(例えば気候変動や水質汚染)や社会問題(貧困、人権侵害など)があれば、それらの解決に貢献できる取り組みを行っているブランドや製品に注目すると良いでしょう。
- 「無理なく続けられるか」を考える: 最初からすべての基準を満たす完璧な製品を探すのは難しいかもしれません。まずは、自分が最も取り組みやすい、または最も心を動かされる基準から意識してみることから始めてみましょう。例えば、「肌に優しいオーガニック素材から」「気になるあのブランドの労働環境を調べてみる」など、小さな一歩で構いません。
- 情報を集める: ブランドの公式サイト、製品タグ、各種認証機関のウェブサイト、エシカルファッションに関する情報サイトなどを参考に、積極的に情報を集めてみましょう。ただし、情報を鵜呑みにせず、複数の情報源を参照することも大切です。
まとめ
エシカルファッションの選び方に決まった正解はありません。環境への負荷を減らすことを優先する人もいれば、生産者の労働環境を最も大切にしたいと考える人もいます。また、動物福祉や持続可能な素材、あるいは服を長く大切に着ることに価値を見出す人もいるでしょう。
これらの多様な視点があることを理解し、ご自身にとって何が最も重要かを見つけることが、エシカルファッションをより身近で、継続可能なものにする鍵となります。
この記事が、皆さんがご自身の基準でエシカルな服選びを始めたり、さらに深めたりするための一助となれば幸いです。小さな意識と選択の積み重ねが、ファッションを通じてより良い未来を作ることに繋がっていきます。